老いのひとこと

鬱陶しいのは長雨だけではないあの好からぬ雑草の繁茂だ。

牧野博士には相済まないが此ればかりは退治いたさねば男が立たぬ。

何気なくスマホを見ればあの小さな画面一杯に鋸の歯のような草刈り道具が大写しだ。

まさに購買意欲をくすぶる絶好のタイミング、ついつい一台あって然るべしと見惚れてしまった。

刃が五枚も六枚も在れば一気呵成に仕事は捗ろう、魅力的な商品到来と此れまたついつい名前や住所欄を埋める始末。

ところが代金着払いでちょっと戸惑い最終的契約を躊躇ったまま放置した。

何故ならば高額商品ゆえネット検索を入れれば案の定高額過ぎる。

思い止まった好判断を愛でながら半月ほど経った頃宅配便が入る。

家内は「一体此れは何ですかと段ボールの梱包を見せる」、一見して草刈り機だ、此れは拙いと玄関先で家内が万札を手渡す其の瞬間、わたしは大声でクレームを付けた。

運転手さんには悪いが「この商品の売買契約は成立していません」あなたには悪いがキャンセルさせて戴きますと一喝した。

気の好さそうな運転手さんは何も言わずに持ち去って行かれた。

大金をどぶに捨てる寸前に救われた。

柄のない取っ手のない草刈り機は何の役に立つと云うのだ、まさに悪徳商法ではないか。

恐れ入ったぞ、参ったぞ。

それにしても間一髪助かり申した。