老いのひとこと

エルマンの詩の一節に「怯懦(きょうだ)を却(しりぞ)ける勇猛心 安易を振り捨てる冒険心」がある。

 

「意気地のない弱い心をしりぞける勇猛心や楽をしようとの弱い心を振り払う冒険心」此れはわたしが鶴来道場へ赴く際に何時も付き纏う心情には打って付けの名言となり得る。

此の歳で若衆と剣を交えて好かろうものかと戸惑いながら心が逡巡する。

 

そんな時には嘗ては古(いにしえ)の剣客神谷(かみや)伝心(でんしん)斎(さい)が説く直心流剣術に言う「非切」を専ら重宝した。

剣の極意は人を切るにあらずしておのれの弱き心つまり非心を切る。

この教えを心に抱き道場の床を踏むのが常だったのだが

今エルマンに出逢い新たなる励ましの金言を座右に置くことが適いとても嬉しい。

此の日は游心館の吉田父子と剣を交えた、小柄な小学4年生の吉田ジュニアと打ち合えば矢張りどうしてもけいたとりなを思い出さざるを得ない。

わたしには唯一無二の愛弟子だったが今や手を退いてしまい少しく淋しい。

 

今日の少年剣士とは相互の禮で思い切りよく大声で「お願いします」「ありがとうございました」の発声で臨んだ。

とても気持ちが好かった、きっとあの少年にも此方の気持ちが乗り移った事だろう。