老いのひとこと

     無断掲載

弱冠23歳初挑戦の棗田龍介選手四段が見事全日本を制覇した。

初出場の怖いもの知らずの特権をフルに活かし破竹の大進撃を見せて呉れた。

実力の世界には年齢も段位も剣理の蘊蓄も経験の度合いも全く無関係であることを何よりも実証した。

見る者にしては全国制覇は痛快そのもではあったが此のわたしには心振るわす感動はなかった。

胸にジーンと来る余韻は何もなかった。

単なる体捌きの優劣と太刀捌きの敏捷さを競い合うだけの浅薄な仕合の連続ではなかったのか。

的確な表現ではないが此れは単なる空き巣狙いの品評会そのものではなかったのか。

辛辣な表現ではあるがお巡りさんが空き巣狙いの技を競うようでは様にならないではないか。

 

命を賭して双方互いに命の尊厳を知り尽くし互いに正面から真向打ち合う相面の技が何より欲しかった。

出頭の小手こそ見られたが0.00秒を競う合う相討ちの面技はわたしが見る限りなかった。

 

人間同士が戦い命が散った其の刹那に込み上げる切ない心のわななきを是非見たいし見せてほしいのです。

NHKが全国放映する以上全剣連の有志の面々は日本剣道を再構築しなければならない、其れを為さねば日本剣道の未来が見えない。

例えば山岡鉄舟・山田次朗吉・小川忠太郎・井上正孝らの諸先輩方の剣の神髄を現代に蘇えらせねば明日の日本剣道はないとわたしは確信したい。