老いのひとこと

コロナ以来数年振りになる町内の野郎会開催の案内状が来た。

如何にも年寄りが烏滸がましくも感じたが会費は当日払いなので申し込みだけして気分に乗じてキャンセルも好かろうと班長さんへ届けて置いた。

 

大相撲観戦に夢中、霧島関に熱海富士関が挑む期待の対戦中に家内が水を差して「班長さんですよ」と大声で呼び掛ける。

ハッと気付く、野郎会だ、辞退しかないと取り次げば、松本班長さんは豪く急き込み大声で「今からでも遅くない、相撲が終わり次第是非ともお願いします」「待っています」と出て行った。

班長さんの好意を無碍に致すも悪かろうと辞退の気持ちを翻すしかなかった。

三四郎でお待ちしますの声が耳の底に残ってはいたが恐らく例のあのお店しか在り得ないと安易な気持ちで家を出た。

ところが其のお目当ての店は三四郎ではない、少々気が焦る町内の大通りを隈なく探すが三四郎は何処にもない。

生憎、携帯は不携帯では探しようがなかろう、30分強さ迷い歩き徘徊し続けた。

足元よろけ最早酩酊状態にして這う這うの体にて家に逃げ帰った。

敗北感しかない、認知能力の欠如を殊の外嘆いた。

 

家内は会場へ電話し松本班長さんに平謝りしているのを隣りの部屋から微かに聞こえた。