老いのひとこと

妙典寺境内に鎮座する津田半山の墓には市の重要文化財指定に匹敵する大きな価値を有しよう。

住職さんを通し著名な郷土史家北春千代氏に掛け合うことを依頼したし、又わたし自身も彼の人物に書面にしたため懇願の書状を送り届けたにもかかわらず先方からは何の音沙汰もない。

恐らくは保存には不向きで価値を見い出せなかったのだろう。

若しそうなら理由を添えて返信あって然るべしと存ずる次第だ。

此の墓には加賀藩平士津田一幽家の血筋が流れ其処へ人持組筆頭今枝家(14000石)と成瀬主税家(2500石)の血統が渾然と統合した由緒深き実に荘厳なる墓碑なのだ。

見事な自然石から成る此の墓石には計り知れない郷土史的価値を内包するは間違いがなしと愚生は判断する。

しかし、此のわたしには如何乍ら其れを解き明かす素養は持ち合わせなかった。

 

況してや半山並びに近三とは正当なる血縁関係の途絶が判明した以上此の墓を墓守する資格はもう無いに等しい。

依って薄情にして冷酷なる判断を下すに至った。

妙典寺住職に無縁仏に処する旨願い出る決断に至った。

実は先日には今枝家研究家の舟田敏氏にも腹の内をぶちまけ了解を執った、彼も同意して呉れた。

優れた文化財との決別、墓仕舞いに処するは非情の極みこころがずきずき痛む。