老いのひとこと

 

お天気が好いので自転車に跨り外回りコースを辿った。

見慣れた光景に在るべき物体が消え失せ余りにも大きな急変にショックを覚えた。

決して定まることを知らない世情のうつろいの激しさに驚くばかりだ。

馬替地内の民家の畑地を取り囲む薔薇の生け垣が悉く根元から伐採された、如何なる事情が在るにしろ無常すぎはしまいか。

色とりどりの花の香を愛でる機会が無くなった思えばやはり淋しい。

同じ馬替地内の線路沿いの老人ホーム敷地内の白梅の成木が此れも根こそぎ遣られ居る、極めて残念だ。

暫し佇み梅の香に陶酔した早春の悦びが薄情にも奪い取られて仕舞いました悲しい限りだ。

馬替神社に願懸けて更に行けば額新保地内の三勇士の墓石三体の内故北小太郎殿の分が見事に撤去されているではないか。

日露戦役の旅順の攻防戦で名誉の戦死を遂げた若き戦士が名実共に本当にお隠れ遊ばされた・・・・・合掌。

斯くなる喪失感を味わったがあすなろ公園にて石踏み作業に取り組めば目下の好天で外遊び中の園児たちに取り囲まれてしまった。

子らも余程機嫌が好かった所為だろう皆が挙って石踏みを仕出したではないか、一人の坊やちゃんはわたしに見習って靴を脱ぎ靴下まで取って勇敢にも裸足で演じ始めたではないか。

非情なる悲しみの後に大なる歓喜が飛び込んだ。

更には例年通り柑橘類の代表格ダイダイの樹の下に赴けば、やっぱり在るではない、地上に落下した丈夫そうなのを四ン個失敬して持ち帰った。