老いぼれへぼ教師の回想記《41》

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数年前になろうか、あの当時は県立武道館が主催する剣道教室へ足繁く通った。
ラッシュ時の渋滞を避けて7時には家を出た。
現役で勤務中とて例はなく、今から考えれば馬鹿げていたかもしれない。
夭逝してしもうたO君の家の前を必ず通った。
必ず、“いってくるぞー”と声を掛けたものだ。
今や、この時点では武道館からは遠ざかってしまった。
やがて、きみたちのところへ参ります。
その折には、あのころの白い歯でにこやかに迎えてほしい。
 
その四 鳴中や 通り過ぎたり 駆け足で(3)
 
五十一年生(下) 

 
 
もう一人OH君の家の横を通って、私は週に三日間県立武道館へ向かう。必ず、おはよう、S君、行って来ます。声に出して挨拶をする。試合や審査の日にはがんばるぞ、見守ってくれよ。と現金なお願いをする。
この歳まで、のうのうと生きてることを詫びているつもりなのだが、水臭いよといわんばかりに白い歯を見せて彼独特のはにかみ顔で微笑み返す。
尤も最近は挨拶を交わせないのが寂しい。大好きな剣道に復帰が叶うように治療に専念せねばならない。
 WK君への墓参も未だに滞らせたままだ。恥ずかしい。この歳になりながら仏心が生じない。
この浅はかさをWKさんに対してもお詫びせねばならない。詫びれば済むものでもない。