老いぼれ剣士の夕雲考《104》

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夕雲流剣術書        小出切一雲 誌(30)
 
針谷夕雲の遺志を継ぐ
  
㉓【此器用人達そろそろ弟子を取扱うて世間へもひろめ、予が名も自ら顯れ、先師夕雲老後に自得せらるヽ所の妙術も是に依て世間へ流布す、今の勢を以て熟々考ふるに當流は水の初めてあふれ出でたる如くなれば、月を重ね年を累ぬるに隨て彌盛に世に行はるべし、然らば予が落命の後も當流の功者こヽかしこに有るべし、】
 
口語訳
 
これらの有能なる人材は、もうそろそろ弟子をとって世間様に広めてくれれば、自ずと我が一雲の名前も知れ渡り、師匠夕雲が老後に自得された相抜けの妙術も世の中に広まっていくに違いないと甘いことを考えたのでした。
今日の勢いで以ってつらつら考えてみますれば、私たちの無住心剣流はあたかも水が初めて溢れ出て来た時のように、年月を重ねる内に益々もって弥栄に、この世に流布することと相成って行きますよ。
そうであるならば、私がこの世を去った後にも、この無住心剣流の確かな後継者が此処彼処に存在して然るべしなりと思うに至ったわけなのです。