老いぼれの居合稽古《2》

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その2
 
横一文字に抜きつける。居合の生命であり最大の眼目だ。
むかし、故末岡敬正師匠と共に長土塀小学校の校庭で不要となった芭蕉の樹を試験台にそれを試みたことがある。
三寸ほどなら切り離すことは適うにしてもその切り口を刃筋通りに一文字に事を為すは先生以外誰も敵わなかった。
みな波打ってしまうのです。
ぶったきりなのです、とても醜いのです。
真の武人の為すことではないのです。
腕力や筋力ではない。謂う処の手の内の一語に尽きるのです。
斬れる居合のことを知ったのは、その時でありました。
柄頭で相手を牽制しつつ切先の鞘離れ鋭く手の内を効かす。
柔軟な手首の作用と小指薬指の操作以外の何物でもない。
それ以上に、鯉口真横に左手鞘引き重要なるは言を俟たぬ。
次いで、自己流運剣を試みる。
真向に斬り込み左右の袈裟懸けと逆袈裟に斬り上げ、刃音を確かめつつ精々10本が限度なのです。