老いぼれの夕雲考《115》

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夕雲流剣術書        小出切一雲 誌(41)
 
畜生兵法をば酷評す
 
【漸く鷹の鳥を獲り猫の鼠を捕ふる程の所作をし、或は上を打よと見せて下をはらひ、横を拂ふふりをしては頭上を竪割にし、身を捨てあたゆる樣にして却て此方へ奪ひ、大勇の氣をはり出し、少しも身命は惜まぬ風情にして既に々破る、時に望みて請け、流し飛ちがへ、はづし、種々の才覺意識智惠を取出して七轉八倒し、俄に當分の難儀を遁れんとす、】
 
口語訳
また、おもむろに鷹が鳥を獲るように、猫が鼠を捕らえる時の仕草を仕出かして、あるいは上を打つように見せかけて下を払うではないか。
横を払う振りをしながら真っ向から頭上へ縦割りに打ち込むではありませんか。
身を捨てて隙を与えるように仕向けて置きながら、逆襲し相手の命を奪ってしまう始末。
また、大いなる勇気は血の気にもなろうが、その表情からは命など少しも惜しくないと大変な強がりを示しながら、実のところ敗色濃厚となると受け被り(今様の引っ被り面=三所隠し)、飛び違え、後退りなど様々な才覚・意識・智慧を駆使しながら七転八倒して難から逃れようとする有様なのである。