窯当番が又巡ってきた。
実働正味4時間の有り余る制作時間が宛がわれた。
此の度は「蓋付き捻り水差し」と洒落込んだ。
此れは、ずっと以前から挑戦してみようと温めていた腹案の一つなのです。
是非ともわたしなりに再現してみたい願いはそれ以来ずっと持ちつづけた。
そして、只今そのチャンスが到来し身震いしたのです。
恥ずかしながらよく酩酊し気が昂ぶると訳も解からず筆を執って墨汁を紙面に叩きつけたものだ。
あの思いで粘土を叩きつけ捏ね上げ紐を積み上げていた。
息もせず一気呵成に作業に取り組んだ。
他人様はその様を鬼の表情と評す。
しかし、此のわたしにすればこれ程充実した一時はない。
時を忘れ我を忘れまさに無の境地で没頭する。
此の時の経過が堪らなく好きだ。
陶芸には武道に匹敵する魅力があるのです。
誠心誠意、一心不乱に事に当たる。
お前さんは馬鹿か阿呆じゃなかろうかと嘲笑されようが一向に構わない。
とにかく、下っ腹には力を込める。
いやいや然に非ず、粘土を捏ねて腰痛をきたすは姿勢が悪く下っ腹の力が抜けているに決まっている。
自然体の正しき姿勢を保ち、もっともっと臍下丹田を充実させろ!
作陶に腰を入れろ!
もっと腰を入れて大胆にひっかき傷を此の土器に施すべきであった。
猫の手を借りるべきでありました。
猫の爪のようにもっと大胆にひっかいてもよかったと今思うのです。