ニュージーランド行き《8》

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ニュージランド紀行 二〇〇六年三月二十六日~四月二日


 


10年ひと昔と云うのから随分むかしの古い古い旅の思い出になってしまいました。


しかし、今にして思えば大変貴重な得難き旅の思い出に違いありません。


機上の小学生ももう成人を過ぎた。


 


 


⑧今回のツアー参加の方々は概して語学力に長じていられたようだ。


修練を積んだ成果のほどを実地に試さんがための武者修行に此処ニュージランドの地を格好の場所をとして捉えられたのでしょう。


未だ、観光擦れするところもなく人口に膾炙することとてまったくない鄙びた処が俄然持てたのに違いない。


流暢に外国語を操り異国人と意思疎通が可能な人たちが羨ましい限りだ。


海外旅行を百倍楽しむ妙手はこの英会話術を手に入れることぐらいは百も承知するのだが、この事を殊更誇示し、さに在らざる輩を卑下し中傷するがごとき御仁の存在にはいささか閉口したし幻滅感を味わったのでした。


冒頭に掲げた失望の一言はこのことに尽きるのだが、英語がしゃべれなくてもおのれの感性で以ってより積極的にアクテイブにプラス要素だけを追い求め捜し求めることの大切さを、これまたこの旅で幾人かの心優しき善意の方々より戴いたことに対し衷心より感謝申し上げたい。


どうもありがとうございました。


往路の機内での座席は左の窓側であったことが実にラッキーだった。


慣れぬ機中泊で眠れぬ身をもどかしく思いながら窓外に目をやると真っ暗闇の天空の一部分に微かに明るみ始めた夜明けの兆候に気づいた。


時計は日本時間の午前三時であった。


次第に白み始め明るさが増すにつれて一面の雲海上に現れた水平線に紛れもなく朝が開け始めた。


分を刻むごとに横一文字に広がる帯の中央が明らみを強め煌々と光り輝いたことを認めた瞬間御来光がわが目を鋭く射抜いた。


富士の山より高き高度一万メートルの成層圏、というよりまさしく天国から捉えた正真正銘の迫力ある御来迎に厳粛にして且つ荘厳なる心境を頂いたのである。


とき日本時刻の三時五十分だった。


なお、機体の左側に日の出を見たとき当初怪訝な感じを持ったが、よくよく考えてみればわれらは今南半球を目指し南下していることに気づき納得したのである。


方位の感覚が混乱しボケ症状が出てしまったわけだ。


帰路の機内の座席も往路とまったく同じ左の窓側だった。


後部座席から少年たちの会話が耳に入った。


宝塚市内の小学六年生だという。


オークランドへ転居した友人に逢いに行ったのだという。


引率者なしで片言の英語を駆使して搭乗手続きを二人の助け合いで乗り切ったのだという。


彼らに日本国の将来を見た。


彼らから大きな勇気をもらったのだ。