老いのひとこと

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ニュースでとても不可解な事故のことを知った。


舞台稽古の最中に若き役者さんが誤って持っていた模擬刀を自分の腹に突き刺し死亡したのだという。


殺陣を演じていて寸止めが敵わず相手を殺傷したのではない。


自分で自分の腹を刺すに至るとは考えられぬ出来事で信じ難い。


転倒した拍子に事が起こったらしいが恐らくは納刀時の重大なる失策以外考えられない。


おのれの切先がおのれに接近するのは納刀の際か割腹の時だろうが刃渡り73センチならやはり納刀のしくじりだったのだろうか。


鯉口を握る左手の甲に刀の棟を滑らす尋常なる流儀ではない見栄えの好い何か特殊な納刀法を修錬中のアクシデントであったのであろうか。


用いたのが模擬刀であったが故に細心の緊張感を欠き安易な惰性に流されてしまっていたのだろうか。


よろよろと倒れ掛かるのも演技の内であったのかも知れない。


或いはひょいとして市川雷蔵三船敏郎ばりの名役者になったかも知れない若き役者を早くして失ったことに相成ろう。


名演技を熱演する晴れの舞台を待たずに他界なされた。


さぞかし無念であったろう、甚くお察し申し上げたい。