老いのひとこと

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前歯の治療はなかなか一朝一夕という訳にはいかない。


先回の抜歯に続いて今回は隣の二本の歯の神経を抜き取り其処へ固形物を挿入する作業を執り行った。


生身のままこんな施術をされれば飛び跳ねて逃げ帰らざるを得まい。


勿論、麻酔に至れども此れが大の苦手情けなくもわなわな震えた。


医師は強圧的に力を抜きなさいとわたしを𠮟責する。


力を抜いて楽にしなさいと激しく云う、動いちゃアブナイですよ繰り返される。


看護婦さんは必死でわたしの顎を押え付ける。


その内、男のくせに肝っ玉の小さい此の小心者メとどやされそうだ。


ようやく拷問から解放される、真冬だと云うのに額には脂汗が玉となって流れる。


 


抜き取った神経をわが目で確認したいと云えばそれは無理だとおっしゃる。


ピンク色した粘液状で口内に流れ出たままらしい。


ただ、抜き取った空洞部分に細菌が繁殖するのを避けるために蓋をするように固形物を埋めましたと此の時ばかりは優しい医師の言葉に返っていた。


レントゲン写真でその物体が装填されたことを確認されていた。


帰り際に看護婦さんに次回も麻酔でしょうかと尋ねればきっと大丈夫でしょうのご返事が返る。


もう麻酔治療は有りませんの言葉がほしかったが一抹の不安がまだ残るのです。