歪と云おうか何とも野暮ったい不定形なる焼き物が仕上がったものだ。
此れこそはこの世に双つと存在しない珍奇なる器には違いない。
通い慣れた額四峠の剝き出しの地層から採取した天然の陶土こそが此の材料に他ならない。
此の粘土を手懐ける者は此の世にはわたくし以外には誰もいない。
そう思えば猶の事異常なる愛着心が沸々と湧きいずるのです。
何を創る当てもなく只無造作にもてあそぶ内にいつの間にか斯様な四角い器が出来上がった。
気障っぽい表現だが此れこそが無心の作と云えまいか。
誰に見せるでもなく媚びるわけでもなくわたくしの身元に侍ればそれでよかろう。
器に合った小さき剣山に四季の野草を無造作に生け給うことよ。
はたまた、気が向けば呑兵衛向きの四角ぐい吞みに
早変わりして酒器に供しても面白かろうに
外面の窪みはごつごつした蔦の蔓の部分を乾燥させそれを千切って嵌め込んでそのまま焼いた。
また、底の部分には珪化木の破片を押し込んで焼いてみた。
珪化木は融解温度には至らず原形を留めたまま白色に変色したもののちゃんと残ったではないか。
此れこそは我ながら一大大発見に値いたそう、大いなる収穫を頂きました。