一球入魂、一打入魂。
投手魂を一球に託して、打者魂を一打に託してプレーする。
蕎麦を打つ方もやはり一打入魂でありましょう。
牛刀を握って肉塊を捌く方や出刃をもってマグロを捌くお方は間違いなく一刀入魂でありましょう。
剣を握るわたしらも一刀入魂、一打入魂で事に当たる。
幾ら竹刀を握った稽古であっても相手の脳天を真っ二つに切り裂く行為なので決しておろそかにしてはいけない。
先ずは非礼なきよう無礼なきよう細心の注意を払い相互の礼をする。
館内に響き渡る気勢を込めて「おねがいします」と叫ぶ。
一期一会の気をその都度その都度確認しながら入魂の一刀一打を繰り出す。
稽古とはいえ冴えある打突で相手を絶命させねばならない。
瀕死の重傷だけを負わせるような軽い打ちや小技の速さだけを追い求めた打ち、況してや残心なき打ちっ放しは絶対に罷りならん。
死にゆく相手に此れほど失礼なことはない。
無礼は許されぬことだといつもおのれを戒める。
五つ目の戒めになる。
試合に勝つためだけの剣道は此のわたくしには最早無用だ。
閻魔大王さんが頷くような立ち合いをしてみたいのです。