老いのひとこと

 

チェンソーを携えて現れた藤井さんは電光石火の早業でカイズカイブキの枝葉を取っ払っていく。

見る見るうちに枯れ枝が小山のようにうず高く積み重なる。

幾ら老い世帯とは言え手をこまねいて傍観いたす訳には行くまい。

家内共々作業着姿でお手伝い致さざるを得ない羽目に陥った次第だ。

不定形にひねくれ曲がった此の樹木独特の枝葉を無造作にトラックの荷台に積み上げては行くが中々要領を得ず極めて梃子摺る。

高尾の山林へ投棄に言った藤井さんから足で踏み付けながら積み上げた方が好かろうと忠告を戴く。

二回目からは其の要領で家内が荷台へ放り上げたものを地下足袋で踏みながらの作業が炎天下に延々と続く。

チェンソーのエンジン音が鳴り響き黙々と家内は荷台へ運び上げ其れを荷崩れしないように積み上げる人、三者三様のコンビネーションが何時とはなしに出来上がった。

ただ惜しむらくは天然の竹材は入手困難で人工竹材で甘んじて受け入れざるを得なかった。

秋が深まるまで待って乾燥させる手間暇は大層なものでコスト面でも割が合わないと藤井さんは云う。

共々余生幾ばくとてない御身たちゆえ先がはっきり見通せるスケスケの垣根で十分なのです。

 

8時半作業開始午後2時過ぎに本日の作業は終了した。