老いのひとこと

怒り心頭に発するとはまさに此のことだ。

好天のもと石踏みを終え桜に名残を惜しんで家に戻るや否やけたたましい甲高い声に何か知らぬが凶事を察知する。

耳を澄まして良く聞けば、家内はわたしの宝物を破損してしまったと云う。 

精魂込め渾身の力で成形した我が分身「鼎」の四脚を無慚にも根元から圧し折ってしまったのだ。

誰が言ったか知らないが、此れぞ「覆水盆に返らず」の例えの通りと相成ってしまった。

本焼き後に接着剤で接合したとて意味をなさない、気落ち著しく落胆のどん底に達す。

再三、階段には要注意と釘を刺したにも拘らず家内は掃除の最中大失策を仕出かしてしまった。

故意ではないにしろ注意を促した意味が無かりしことは極めて残念至極なり。

 

然りとて、死んだ子の年を幾ら数えてみても埒が明かない。

さっと水に流して出直しだ。

再度挑戦すれば済むことではないか。