老いのひとこと

 

その足で市民課生活衛生室の門を叩けば兎に角ガードを固めて役所の仕来たり通り守秘義務を楯に秘密漏洩に豪く神経質な仕草に恐れ入る。

吉村重正の実名を語れば狼狽色隠せず何処から入手したかと怪訝そうな眼を注ぐ。

吉村家の墓地に得体知れぬ能路家の崩壊した墓が在り当方が困惑いたすのを尻目に存在知れぬ吉村家からの告発を極端に恐れるお役人には少々頭にきた。

吉村を重んじ高橋を軽んずる其の判断基準は何処に在るのかとわたしも声を荒げる。

 

結局のところ決着点は此の半壊する能路家の墓に標識を掲げ「当該墓石に関わりある者は即刻市役所へ連絡あれ」と告知する旨了解を頂いた。

期限を一年程度にする旨此れも了解を執った。

通報が無ければ役所の権限で若干位置を移動させる確約も執った。

当方に余力あらば補修は出来ぬまでも積み直す程度の労を執ろうかとも考えたが意味無き事のように思えて来た。

 

吉村家の墓地に何ゆえ能路家の墓が設置されしものかとても面白い命題を頂いたのだがその謎を解き明かす術は残念だが何処にもない。

 

よし、玉川へ行こう。