夕雲流剣術書 小出切一雲 誌(23)
わが師夕雲とはどのような人物か
真の勝利とは
⑯【一旦豁然として大悟し、兵法を離れて勝理明かに、人生天理の自然に安座して一切の所作を破り、八面玲瓏物外獨立の眞妙を得られたり、】
口語訳
そして、夕雲はある日の朝方、突然迷いから覚めて悟りの境地に達したのでした。
つまり、それまでの既存の諸兵法に捉われる事無く、勝利の理を明らかにして行ったのであります。
そして、人生たるもの須らく人為でない天然自然の道理にのみ安らかなる寛 ( くつろ )ぎを見い出して、一切の兵法とか剣技の所作を全て破り捨て去り、八面 ( はちめん )玲 ( れい )瓏 ( ろう )・物外 ( ぶつがい )獨立 ( どくりつ )の真 ( しん )妙 ( みょう )を遂に自得されたのである。
すなわち、心の曇りやわだかまりもない、世俗を超越した状態の中から、私の師匠である針谷夕雲は真実の「剣の妙案」を自ら獲得されたことになるのであります。