沖縄の旅«7»

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沖縄旅日記  二〇〇七年十二月十二日~十四日
 
 
  恩納村の万座毛より眼下を見下ろせば隆起珊瑚礁の断崖が切り立ち、奇岩奇石が紺碧の東シナ海の荒波に洗われている。白波が疾風に舞っている。
大陸からの季節風が容赦なく顔面に突き刺さるがかえって涼風にさえ感じられ心地よい。
ユーラシア大陸から舞い込む乾燥した大気に、異文化のさまざまな香りと異民族の体臭すら感じ取り、わたしは一人ご満悦の心境に浸った。
既に雨も上がり薄日が洩れ始めた。
琉球の民、沖縄県人は悠久の昔から、かくなる風土の中ではぐくまれ、これを滋養として摂取し、順応し、適応したに違いがない。
象さんのお鼻と称する名所をあとに、名護パイナップルパークへ移動する。
バス車内はエヤコンをフル稼動させても暑苦しい。
外気は二十五℃以上の夏日ではないか。
もちろん、半袖のポロシャツ姿で快適そのもの、出発に際し容ちゃんが気遣ってくれて大いに助かった。
完熟した甘酸っぱくジュウシイな香水を全身に浴び、店内は芳醇な香りでむせ返っている。
処が一瞬にして幻滅の淵へ、現実の世界へ突き落とされるのである。
客人おのおのに超どでかく無体裁なる買い物袋が宛がわれた次第で、興ざめも甚だしいのである。
いやがうえにも半強制的に何がしかの陳列物を買い求めざるを得ない。
ツアー旅行の宿命とはいえ、斯くもありなん、考えてみれば当たり前なことなのである。
でも、あからさまに堂々と押し付けられたのはやはりお国柄なのだ。
しかし、間もなく私のひがみ根性が誤りであったことに気付くのである。
と同時に、私の記憶に、つい最近目にした新聞記事をふと思いついた次第なのだ。
まさにこれぞ第六次産業に違いないと確信した。
大きくおのれにうなずき納得したのだった。
そういえば、ここの店員さんたちの殊の外明るく、大いなる自信に満ち満ちた表情と雰囲気の拠って来たる原因が今はっきりと解明されたのだ。
一次産品たるパイナップルの果実が即工場の生産ラインに乗りベルトコンベアの上を流れ流れて、種々さまざまなジュースにワインをはじめ、ありとあらゆるケーキやクッキーの類、予想もつかないような各種各様の二次産品に変形され、その生産工程から直ちに流通経路に直結され商品として売りさばかれてゆくのである。
恐れ入ることで、その場で本土各地への直送サービスも完備され、まさに日本全国市場を相手としているのである。
一次、二次、三次産業が渾然一体となった第六次産業の真っ只中で我ら観光客同士が蜂の巣をつついたような大混乱の中で必死になって商品を買いあさっている姿はむしろ滑稽としか言いようがない。
疲弊しきっている沖縄経済にとり起死回生の妙薬となればこれほど結構なことはないのである。