新幹線の旅≪4≫

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東京でのお宿は「八重洲ターミナルホテル」に予約していた。


 八重洲北口より徒歩3分という好条件ではあったが大都会のど真ん中に放り出された子羊同然ただおろおろするばかり、桜通りを何度も行き来しながら苦労の末捜し出したのです。


 フロントで「大手町駅」への道案内を乞うたが全然要領を得ない。


 それでも、強か歩くうちに「大手町駅」を案内する地下道に出くわし潜り込んた。


そして、これまた歩きに歩いて漸くお目当ての「都営地下鉄三田線」の駅に辿り付けたのでした。


 「御成門駅」で下車し程なくして第一番目の見学先「増上寺」に到着いたしたのです。


只其処で些かびっくりしたのは此の「大手町駅」の複雑怪奇な構造とその広大なる敷地空間に魂消てしまったのです。


 皇居の真下にトンネルを掘る訳にも行かないのでしょう、何本もの地下鉄路線が此の地に集中して入り込み蜘蛛の巣のようになってしまったらしい。


 江戸っ子ですら此の駅には戸惑うらしい、況してや年老いた御上りさんにはまさに迷宮入りそのものでした。


 


 増上寺山門に立てば寺格の高さをいやと云うほど肌で感ずるのです。


 家康所縁の徳川将軍家菩提寺であるばかりではなく法然所縁の浄土宗大本山でもあるのだという。


 おもむろに境内を歩むうちに本堂の方からお声が響く。 


 法衣をまとった僧籍あるお坊さんがお話しを為される。


 観光ガイドさんではない、法然の事や徳川家の事を平易な言葉で噛み砕いて突っ込みよろしく相当詳細に講話がつづくのです。


 いつの間にかわたしたちもその末席に付かさせて戴きました。


 後から知ったことではあるがどうも島根県内の浄土宗派の門徒さん一行の中に紛れ込んでしまったわけなのです。


 道理で懇切丁寧な解説が添えられたことになろう。


 わたしらもお話しに魅せられてぞろぞろとその団体の一員に成り済ませて行動を共にしたのです。


 霊廟に案内されて2代将軍秀忠の墓は木製だったので火災で焼失したまま現存しない事を聞いた。


 また、14代将軍家茂公の墓石に比し和宮妃のお墓は菊の御紋が入る青銅製のより格式高い作りであることを知らされたりもした。


 そして、此れまた後の祭りとなるのだが此の霊廟には拝観料が伴ったのだが知らぬ存ぜぬまま成り済ましを貫いてしまったのです。


 厚かましくも図々しい恥知らず者に成り下がったものだ。


 今にして思えば、手を合わせお参りしたご利益であったのだと気を(なだ)めるしかない。


 


 数多の地蔵さん前で共に合掌したり、法然の詠んだ歌を鑑賞したりもした。


 


 池の水


   人のこころに似たりけり


        濁り澄むこと定めなければ


 


 人のこころは移り変わり易い、此の言葉を戒めとして一途なこころを貫いて生きていくことの大切さをわが肝に銘じた次第なのです。