県の美術館へ油絵の汚れ落としについて問い合わせてみた。
修復工房まで設置されるが一般の作品の受け付けは為さないという。
若しや手軽な方法でよいのであれば蒸留水と綿棒さえあれば簡単にできますよと親切にも教えてくださった。
どうしても落ちなければほんの少々エタノールを混ぜてみたらどうでしょうかという。
根気のいる作業だがぜひ試してみなさいとえらく優しいお方でした。
なお、あなたにとって掛け替えのない作品なら寺町の画材屋さん「かゆう堂」をお勧めしますと紹介していただいた。
ならばせめて見積もりだけでもお願いしてみよ早速赴けば何のことはない大変なお目玉を頂戴してしまったではないか。
職人気質の初老の御主人は依頼されれば仕事はするが第一彼方のような芸術に対する無理解者は絵画を所持する資格は何処にもないと実に手厳しい。
此の滝川武雄の作品が可哀想ではないか嘆き悲しんでいるではないとわたしを睨む。
ここまで放置すれば病状は瀕死の状態既に手遅れというしかない。
絵画は生き物だという、生き物を手厚く保護する勤めを少なくとも絵画の持ち主は気を砕いて果たさねばならなかったのだと諭すのです。
二枚合わせて処置代は最低でも十万円を下らないとわたしの顔色をじっと窺っている。
わたしは此の店主さんにわたしの絵心をためされていることに気付いた。
暫し考えたが、わたしらにはもう然程の余力も残されてはいない。
失意の断念を決意せざるを得なかった。
帰りの足でドラッグストアで蒸留水の代用品精製水と綿棒を寂しく買い求めたのです。