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85歳の爺様が木刀で熊を退治したという。
熊は裏山へ逃げ去ったという。
此の爺様は相当に剣術には長けていられたに相違ない。
庭で熊に出くわしたので家から木刀を取り出されものか、それとも庭先で木刀を手に稽古に勤しんでいられた時に遭遇したものかその辺はよく判らないが恐らくは剣道の大家に間違いない。
なまじ剣道に自信をお持ちであるにしろ敢えて熊と対峙なされたとは此れ驚きの一語だ。
木刀の定寸は三尺三寸五分たかが1メートルばかりの棒切れで熊に間合いを詰めて至近距離まで攻め入るとは常識では考えられない。
わたしには経験がないが実際モノを切るときには鍔元で切れとの教えがあるという。
緊張の場面では切っ先すら届かず大事を招きかねない。
きっと此の爺様は剣術のみならずマタギの素養を持つ猟師さんではあるまいか。
熊の泣き所弱点を見抜いて其処を直撃されたのではないだろうか。
そうとしか推察できない、木刀は折れることはないにしても木刀諸共引き摺り込まれる危険性が大いにあったと思う。
いずれにしろ見上げた天晴な快爺さんである。