街中に取りの残された一枚の水田、何故かしら気拙い思いでたたずむ。
かつては加賀百万石のその本居、加賀平野のど真ん中も御多聞に漏れず都市化の波に翻弄され最早田んぼは肩身の狭い存在になってしまった。
偶々、通りすがりに目にした光景だがわたしには二度と再現が敵わぬ貴重な情景にみえて仕方がなかった。
じりじり汗ばむ昼下がり年老いし農婦が田仕事に精を出す。
腰を屈めたままたじろぐことなく暫し動かぬ。
愛情をこめ細かく丹念に除草作業に当たられる様子がひしひしと伝わる。
機械化農業に今時なぜ農薬散布をしないのか。
恐らくは無農薬栽培や有機栽培に精魂を傾けていられるのでしょう。
健気なお姿ではありませんか。
それとも好からぬ邪推で除草剤散布は近隣の住宅への気遣いなのかも知れない。
いずれにしろ、瑞穂の国に稲穂が垂れるには米の字が示唆する通り八十八通りの労苦が伴なうのだという。
収穫の歓びを謳い上げる先に何んと過酷なる農作業が待っていることか。
その見事なる一断面に図らずも遭遇いたしました。
頭が下がる想いです。