老いのひとこと

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寝付きは好い方でお子様並みに10時には床に就く。


小用の為一乃至二回はどうしても止むを得ない。


体時計に促され目覚めて障子を見れば明るく夜明けを知らす。


長針が20分を過ぎている今日は遅刻だ。


せめて第2だけでもやって来ようと慌てふためき着替えてズックを履こうと構えたら家内から声が掛る。


「こんなに早く何処へ行かれますか」と質してくる。


寝ボケか本ボケか判らぬが時計の針を見誤っていた。


未だ嘗てこんな失策はなかった困ったものだ。


齢は取りたくないものだ。


 


 


先日のこと家内が「薄気味悪い、此れは何の音だろう、さっきから鳴り止まない」と怪訝そうに問い掛けてくる。


物置をあちこち探すがわたしの耳には物音一つしない。


気の所為に決まっている我が家内もとうとうボケ症状に至ったかと悲嘆と落胆の入り混じった複雑な衝撃がわたしを襲う。


 


その内家内が「アッタ」と取り出したるは何と灯油用ポンプではないか。


わたしは「しまった」・「参った」と小手面の技を連取された思いだった。


何のことはない一時間ほど前に此のわたし、タンクへポリ容器の灯油を注入したのでした。


その折用いたポンプのスイッチを切らず仕舞いのまま所定の場所へ返したのです。


空回りする振動音が家内の耳には的確にキャッチされたが此のわたしの耳にはその微かな低音は皆目聞こえなかった。


 


家内は全て安泰でしたが危ないのは此のわたしの方でした。