老いのひとこと

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花柘榴の咲く家のあるじにはその後逢う機会がない。

とても気さくなお方でした。

花は咲けど果実は実らず、あの酸味を帯びた深紅の血潮の粒々を覗うことは敵わないという。

その花柘榴の咲くお家の横をいつも左折する。

或る日路上に落つる幼き柘榴の実を見て此れぞまさに柘榴の泡子に外なかろう。

梅雨サメと共に逝った未熟なる泡子たちの多くをわたしは見て見ぬ振りをしてやり過ごした薄情者であったことに気が付いた。

我がたなごころに安置し天にかかげて供養した。

此の家の心ある人が供養塔を築き居りて愛犬をかたどった泡子地蔵を設け在りしや。