下手糞老いぼれ剣士の独り言

剣の効用

攻めの気勢があってこそ出頭の技が成り立ちましょう。          攻められて、そのあげく窮余の一策として打突挙動の兆しを現わした刹那に鮮やかなる技を仕掛けられてしまう。
お見事なる、起こり頭の技は斯くの如くして成就されるのである。
仕掛け技のみならず、応じ技とて待ち剣ではいただけないし覚束ないこととなろう。
ことごとく、攻めの気勢が要求されよう。摺り上げ技も返し技も、抜き技までもが気持ちの上では明らかに攻めていなくてはならない。
地球温暖化が喧伝され、今年の長期予報も暖冬を吹聴していたが、あにはからんや殊の外、この列島に超一流の寒波が続々と襲来し震え上がってしまった。
その上、連日の降雪に伴い雪掻きが強要されてしまった。雪国の宿命でもある雪すかしは疎いに決まっているのだが、今年はどうしたことか、雪よ来い、早く来い、雪よ降れ、うんと降れと希ったのである。
年甲斐もなく、果敢に雪に立ち向かう気概を新たにしたのである。
それというのも、剣道をやらせて頂いておるお蔭だと感謝せざるを得ない。
下手の横好きの類だが何の訳あってか、性懲りもなく剣道をやり続けておる。
何のために剣道を学ぶのかと自問自答したとき、気弱なる小心者が生老病死の四苦に対面し、恐れおののきわなわなと震え泣きじゃくる不様な生き様を、決して衆目にさらしたくはない、この一念が支えとなっているのだろう。
強くなりたい願望は誰にも益して持ち続け固執する。
誰にも負けたくない敵愾心を抱き持つわが身を不憫に思ったりもする。
とは言うものの、所詮老いの身俊敏なる技では叶うはずもなく、せめて気合で戦い、剣の心で争うしかない。
気勢を保持し気攻めを維持貫徹するには退路を断つしかない。
老いの一徹と揶揄されようが攻めの一手しかない。
雲の間からのお迎えにもわたしは雄雄しく応じ返す心積もりだ。