老いぼれへぼ剣士の夕雲考《26》

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古猫が語ったのだという。
武の真髄は人をば殺傷し攻め立てることではなく、相手と如何に対応するか泰然自若として時を待つ事なのだと語った。
物来たりなば従って応ずる。そして、痕を残さぬよう配慮することが大事だと付け加えたのだという。
 
現今の政府与党の外交処理が極めて拙劣だという。
先般の尖閣問題の折、時の官房長官に対し弱腰外交とかへっぴり腰だのやなぎ腰などと厳しく揶揄した。
何故以って、猛々しく威丈高に中国へ抗議しないのかと攻め立てた。
ナショナリズムに火をつけ国論を煽った。
確かに政府与党の外交問題は鬼門かもしれないがわたしは武道精神に則った、古猫のような大人の外交だと評価してもよいことだと思う。
 
 
 
 
鈴木大拙は夕雲をどのように観察し評価したか(6)
 
 
 
手に負えない程の乱暴狼藉を働く一匹の大ネズミを捕まえるに当たり、先ずは鋭い目付きの黒猫が現れ早業、軽業研ぎ澄ました技巧を駆使して挑んでみたがしくじってしまった。
次には、虎毛の大猫が気合でネズミを圧倒するのだと挑んだが、これまた敵わなかった。
続いて、灰色の少し年老いた牡猫は心を鍛え上げ、争うことなく和睦を講じてみたが大ネズミに見透かされてしまい講和はならなかった。
そして、薄ぼんやりとした頼り甲斐のない、みすぼらしい感じの古猫が登場し語ったのだという。
真実、己を忘れ、物を忘れ、物無きに帰したならば、神武不殺の境涯を得よう事よ。
即ち、武の神髄は人を殺すことではなく、攻め立てることでもない。相手といかに対応するか泰然と時を待つことなんだと説いた。
古猫は更に続けて、蓄えず偏らず、敵もなく我もない。物来たりなば従がって応じて、跡を残さない事をモットーとすべきなのだという。