老いぼれの愛犬日記《28》

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リードと針金
 われら人間にも犬歯があり、それも上下四本もあるという。
 文字通りこの犬歯は犬族が顕著なので犬歯と書き表すのだという。
 りりはメス犬ではあったが立派な犬歯を持ち前としていた。
 本来、肉食の犬たちには獲物に噛み付きこの犬歯で以って肉を切り裂く必要があったのだという。
 日頃十分な肉塊 (にっかい)を与えなかった所為 (せい)なのかわが愛犬は事もあろうにリードのロープを食い千切ってしまった。
 明らかに切断こそしなかったがぼろぼろに噛み砕かれてしまったわけだ。
 わがテリトリーを懸命に防禦せんが爲、不法者の侵入をみればまるで狂ったようにリード線を鋭い犬歯で引き千切らんと頑張っていた。
 恐らく解き放されれば相手に飛び掛かっていた事だろう。
 念のために針金やボンドで補強したものが今も残る。
 そのファイターはもう居ない。