老いぼれの独り言

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先日の夕食の折、好物の高野豆腐をほお張ったらお口の中に何やら石ころのような異物に気付いた。
( すんで )の事で噛み砕いたのだが「前歯が外れた」と直感したので何とか助かった。
案の定、根元からぽきんと折れている。
自分の歯には違わないが金属加工された本物の石ころのように映る。
接着剤が腐蝕されたのか歯独特の嫌な臭いもする。
掛かり付けの若き歯医者さんは、「もう一回はくっ付けますが次回こそは抜歯して差歯に処置しますよ」と予告された上例の接着作業に取り掛かられた。
それがボンドを付けて圧し込めるわけには行かない。
先ずは、歯茎の辺りに数本の麻酔が施される。
此れが何とも堪らないくらいに痛い。
前回は配慮されてわたしの両目を塞ぐようにガーゼを被せてもらったのだが今回はそれがない。
其処に居るのは医師と複数の看護婦さんだけとは知りながらもわたしは激痛に ( おび ) ( おのの ) ( しか )める情けない容貌を他人に見せたくはない。
そう思いつつもどうにもならない。
前回同様、鉄舟や半平太を見習えと我が身を叱咤するが全然ダメなのだ。
やせ我慢どころでは済まない。
テメエは何時ももののふの端くれのように ( えら )そうに高振っているが、何のことはない気の小さい臆病者に過ぎないではないか。    
その情けない姿を衆目に晒して何にも感じないのかと我が身を精一杯 ( なじ )ったのです。
でも、治療室を出るとき看護婦さんは何事もなかったのように愛想のいい笑顔で応対してくれた。
少しほっとした。