老いのひとこと

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1963年は昭和38年であって三八豪雪の年になる。
 此の年に三島由紀夫は此の短編小説「剣」を此の世に出した。
 125年生まれの三島にすれば1963年は38歳の齢になる。
 その翌年の1964年には逸早く大映が映画化を企画し同名の「剣」の名で封切られた。
 三隅研次がメガホンをとり市川雷蔵がはまり役の主人公国分次郎を演じ賀川役には川津祐介が壬生役に長谷川明男が扮して当時はまだモノクロ映画ではあったがクランプアップしたのです。
 
 実を申せば、千葉県の加藤さんの並々ならぬご好意で此の映画「剣」を全編収録したDVDを贈り届けて頂いたのです。
 氏とは面識はない間柄ではありますがいろいろと剣道の奥義についてご指南を授けて戴いて居るのです。
加藤剣士は学生剣道から叩き上げられお仕事の傍ら現在は練士六段の腕前で少年剣士のご指導に熱心に取り組まれていられるのです。
恐れ多くもわたしは剣の師から贈り物を頂戴してしまったことになる。
 わたしの青春には剣道の二文字はなかった。
まったく無縁の存在で只々羨望のまなこで此の映画を観るしかなかった。
でも、生唾を飲む思いでクギ付けになって刮目したのでした。
 
 因みに此の時、主演の市川雷蔵1931年生まれなので32歳を数えたことになる。
 歌舞伎で培われた演技力は流石で面がね越しに見る憂愁を帯びた勇姿からは雷蔵の絶頂期を思わせるのです。
 それにしても、まさか国分次郎役の此の市川雷蔵が其のわずか五年後にして早くも我が人生の幕を下ろされるとは誰しも知り得ぬ出来事だったのです。
 国分次郎は自ら死の道を選んで逝ったが市川雷蔵は癌と云う病魔に冒され37歳の若き命を終えられたのでした。
 其処へ以って、此のドラマの原作者三島由紀夫がこれまた劇的なる人生終焉劇を御身自ら演出なされたのです。
 小品「剣」を世に問うてから七年を経た1970年に45歳の尊い命を自らの手で文字通り腹掻っ捌いて終えられてしまった。
 主人公国分次郎の自決は何故かしら7年後の此の事を示唆しているように思えてならない。
 
 2014年は国分次郎氏の51周忌、市川雷蔵氏の45周忌、三島由紀夫氏の44周忌を迎えることになろう。
 もしや此方たちが此の世に御存命ならば国分次郎氏は73歳、市川雷蔵氏は83歳、三島由紀夫氏は89歳の御歳となる。
 その中にあって1935年生まれの此のわたくしだけがのうのうと未だ世に憚って生きている。