無断掲載
此の年に三島由紀夫は此の短編小説「剣」を此の世に出した。
1925年生まれの三島にすれば1963年は38歳の齢になる。
実を申せば、千葉県の加藤さんの並々ならぬご好意で此の映画「剣」を全編収録したDVDを贈り届けて頂いたのです。
氏とは面識はない間柄ではありますがいろいろと剣道の奥義についてご指南を授けて戴いて居るのです。
加藤剣士は学生剣道から叩き上げられお仕事の傍ら現在は練士六段の腕前で少年剣士のご指導に熱心に取り組まれていられるのです。
恐れ多くもわたしは剣の師から贈り物を頂戴してしまったことになる。
わたしの青春には剣道の二文字はなかった。
まったく無縁の存在で只々羨望のまなこで此の映画を観るしかなかった。
でも、生唾を飲む思いでクギ付けになって刮目したのでした。
歌舞伎で培われた演技力は流石で面がね越しに見る憂愁を帯びた勇姿からは雷蔵の絶頂期を思わせるのです。
それにしても、まさか国分次郎役の此の市川雷蔵が其のわずか五年後にして早くも我が人生の幕を下ろされるとは誰しも知り得ぬ出来事だったのです。
其処へ以って、此のドラマの原作者三島由紀夫がこれまた劇的なる人生終焉劇を御身自ら演出なされたのです。
主人公国分次郎の自決は何故かしら7年後の此の事を示唆しているように思えてならない。
その中にあって1935年生まれの此のわたくしだけがのうのうと未だ世に憚って生きている。