老いのひとこと

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契約した石材屋さんとは新制中学校の同級生だったが終戦直後の巨大マンモス校だったので互いに名前すら知らぬ間柄だった。


以来その道一筋に歩まれ今日の地位を築かれた。


設計図を見るまでもなく叩き上げられた年輪が滲み出ている。


几帳面な文字面、緻密な計算力何よりも寸法の単位をセンチと尺貫法を併記される職人気質には敬服せざるを得ない。


 


問題は墓石のメインが庭石なる自然石なのだが此のやや黄褐色を帯びた此の石の特性を引き出すよう一世一代の仕事として頑張りましょうと頼もしい言葉を頂戴する。


 


納期は11月中を目途に取り掛かると云うがわたしの誕生祝いともなれば勿怪の幸いと相成ろう。


間もなくして野田山地の頂に位置する此の地に吾輩の永遠の住処たる寿陵が建立することになる。


 


とても良いことではないか素直に喜ぼうではないか。


 


其処へ入室が許されるまでは今まで通り此れからも気取らず気張らず欲張らず淡々としかも粛々とわたしに与えられた道を歩むしかない。