老いのひとこと

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世のため人のために役立つ行いは煎じ詰めれば自分のためになる。


此の謎の命題を解くカギは意外なところに転がっていた。


これ以上の迷答はないとわたしは自負するのです。


夜毎失火のニュースを耳にする、夜回り火の用心が励行されても起こるべくして起こるのかも知れない。


拍子木を打ち鳴らすことを決意し先日より実行に移すに至る。


凡そ三十分間強の散歩がてらに町内を巡回することに相致した。


雨も降らないのに雨合羽に身を包み目立たぬ身形でほゞ日没を待って出かける。


最早照れるような齢ではないのだがそれでも照れくさいものだ。


努めて無心を心掛ける。


他人に逢っても絡繰り人形のように恰もロボットのように知らぬ顔して通り過ぎる。


打つにはコツが要る。


乾いた好い音色だと小太刀の形で受流しが巧くいったと思いながら又打ち鳴らす。


拍子木を叩きながら自分に言い聞かせる。


此れは人の為ではない、おのれの健康維持の一手段に過ぎなかろうと説得する。


「好い加減なヤッチャなあ」とおのれを嘲笑しながら自問自答する。


そうです、「情けは人の為ならず」の言葉通りを目下実践中なのであります。


動機は一見善行に見えるが本音は然に非ず醜いヤツなのです。


そう云って自分で自分を誤魔化しながら拍子木を打つのです。