うらなりの記《32》

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このような浅ましいことを吐露してなんの意味があろう。
このような浅ましいことを呼び戻して、そのことによって
なにが得られますでしょうか。
なにもあるはずはなかろう。
わたしの根っこのもといに悪臭はなつヘドロのようながれきが
今以って永遠に生き続けている事を知らしめただけではないか。
 
放射性廃棄物を地中奥深くに埋葬するに等しい。
このような宿命は居た堪らないことだ。悲しいことだ。
 
 
その三  父高橋忠勝(11)
 
 
処が、この最大の不孝者めが追い撃ちをかけてしまうのだ。
茹だるような昼下がり、息を殺して好機を窺がう。やがて、一時が過ぎると辺りは更に一層静寂さが増し、ヒグラシがけたたましく鳴き始めた。冴え渡る乾いたカナカナ蝉の鳴く声が、今以てうら寂しく耳に残る。
だだっ広い当家の居間の中央に食卓があり、御櫃が上にあった。
私は野良猫のような狡猾なる座った目付きで、そこへ忍び寄り手掴みで頬張った。胃袋へ貯め込むように貪った。浅はかなる光景が展開された。
味はなかった。肉体的空腹感は解消したかもしれないが、ひもじい心を癒すことはなかった。
今一つ忘れ難き唖然たる光景がその時に展開されていた。