うらなりの記《73》

 
 
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 父が大切に愛蔵し保管していたものを、無断で借用し終いには我が物の如くに掠め取ってしまった大罪を詫びねばならない。
その都度、父より大目玉を頂戴したことは忘れもしないのだが、とうとう最後はあきらめたらしい。
 聖徳太子の五千圓と壱萬圓札、武内宿禰高橋是清らに混じって和気清麻呂の壱拾円紙幣はなんと兌換券ではないか。
 生きた教材足り得た。
 
その七 友重(6)
 
 ついでに申し述べれば、利治家から拝借したまま私物同然に所持している物として戦前発行の日本銀行券が数枚ある。
 終戦間もないころ隠匿したもので父より咎められた折、社会科の生きた教材としての利用価値を主張し、それ以来私が実質保管しているのである。
 それに、この記述に関連して一族の者の過去における生没年を調べるために位牌を借り受けた次第だが、大切なものとしてどこかへ厳格に保管したつもりなのだが、それが見当たらない。 質入したり他人へ売却できる代物ではないので、目下家中を捜索している。 
 利治家へはその旨当方の不注意を報告し詫びは入れてあるのである。
 
 さらに、われらの曽祖父にあたる松井政之丞=高橋政之丞=高橋精路が所持した遺品の書類数点と、そして先祖由緒一類符帳がある。当然利治家へ返さねばならない。
 なお、ご先祖の由緒書きの類は私が責任を持って保管することに決められた。