雑草園顛末記《17》

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⑰ 忠犬リリぃ
 99日防災訓練を終えてから、大根植え付け作業へわが身を駆り立てる。
通りすがりのことである。
 
 かつて、此処の御主人より玉ねぎの苗を頂戴したことがある。
 今はご立派な御子息がお父さんの御遺志を継いで菜園を営んでおられる。
 この日は、お母さんとご一緒の農作業であった。
 通り掛けに御挨拶を交わすうち、わたしの愛犬に話が及んだ。
 すると、このお二人からわたしの畑仕事中の一部始終を克明に思い返すように語られるのです。
 犬を伴ったわたしが金網に縛って長時間束縛し、いぬ様を平然と待たせていたその様子をイヌ贔屓 (ひいき)の口調で滔々 (とうとう)語られる
 結わいだ綱がもう少し長かったらとか、日差しを避ける物影が欲しいなあと思ったとか話題は尽きなかった。
 ただ黙然と伏したままひたすら待ち続けるわたしの犬の行状をものの見事に再現してくれた。
 わたしと一心同体に成り果てた「犬と人間」の結合体を二人揃って賛美された。
 この時も、白昼堂々と他人様に涙を見せてしまった。
 うれし涙が止めどなく流れた。