老いぼれ剣士の夕雲考《102》

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夕雲流剣術書        小出切一雲 誌(28)
 
針谷夕雲の遺志を継ぐ
 
㉑【予更に兵法を取廣むる心なく、只日夜に其理をたのしみて自己の飢寒を忘れ、卅九歳の時に深川に退去して姓名を改め、深く兵術を秘めあらはさず、年月を送るの所に、】
 
口語訳
 
当時の私は、更に兵法を極めるような心境にはなく、只日夜を問わず、断るまでもなく当たり前のことのように享楽だけに耽り、飢えや寒さからも開放された実に安閑とした日々を送っていたのでした。
処が三十九歳の頃、世間との交わりという煩わしさを避け心静かに暮らそうと、深川の海辺大工町に住いを移し、ついでに名前も小出切一雲と改めました。
そして秘かに、他人に知られないように一人兵術を探求する年月を送ったのでした。