老いぼれの独り言

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●初稽古 打ち合う響き 床揺らぐ
 
《二日県武へ初稽古に赴いた。両刀づかいとはゆくはずもなく居合の部にしぼり参加する。
 三十名を越える精鋭たちが参集していた。
静寂の中、空気を断ち切る鋭き羽音を四方八方から捉える。
 技の実力を囲う名士たちに取り囲まれた錯覚を覚える。
 自ずと老輩は下座の末席に身を置かざるを得ない。
 しゃしゃり出て立ち振る舞うことはわたしには敵わない。
 前方で田宮流の大御所たる高柳氏が異才を放つ演武を披露為されていた。
 氏の額には玉のような汗が光っていた。此の極寒の道場で氏が如何に真剣に抜いていたかの証しでもあろう。
 それに引き換え、此のわたしは乾涸 (ひから)びた様相でしかなくまったく精彩を欠いた。
 嘆かわしい限りである。
 
わたしの竹刀剣道は毎週日曜日の午後五時過ぎに叶えられる。
尚道館日曜会には近隣の有志、猛者連が相集い息の継ぐ間なく小一時間打ち捲くるのである。
もっぱら切り返しと正面打ちに終始する。
炸裂する裂帛の気合いが一町四方に轟き渡る。
老いぼれとて全身全霊の気力を振り絞り、たとえ六七段の高段者といえども対等の気位で以ってぶち当たる。
でなければ、これ以上の失禮はない。
かくして無上の悦びを体得し醍醐味を満喫できるのである。
いや、生きる糧に他ならない。
一月六日が待ち遠しい。》