うらなりの記《110》

イメージ 1
 
⑯ つい先日、テレビでうつ病への対処法を映していた。
今や十五人に一人の割で罹患者がいるのだという。
でも、修正型電気けいれん療法が普及し治癒率がアップしたという。
 麻酔薬や筋弛緩剤を投入し苦痛を和らげ骨折等の障碍が皆無だという。
 逆に捉えれば、わたしが受けた電撃ショック療法は、其れなりに飛び跳ねる程の苦痛と骨折等の傷害が伴ったのであろう。
ロープで鋼鉄製のベットに束縛された所以だ。
確か国立病院の前身は陸軍病院だったと聞く。
ならば、昭和二十九年の頃には少々の荒治療が残っていても不思議ではない。
しかし、この荒治療があったがこそ今日まで生き延び命を永らえたことになる。
土地柄からして殊更体裁や見栄や外聞を気にした。
世間体を憚ったらしい。誰も見舞いに来るものは居なかった。
 
身内のものも数少ない友人たちも、況してや学校の教師たちも来るはずがない。
それというのも全て私の意中を察してのことであったのであろう。
それでよかったのだ。
何よりわたし自身が見栄や外聞、世間体を気にしていたのは事実なのだ。