老いぼれの弓事始め《29》

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                     少し馴染んだようだ
 
㉗ 氷点下には至らねども今日もとにかく寒い。
幸い風なし。雨戸一枚置きに半開き。
 月初めにユカケ新調せり。
 一括払いで自分のものであるはずなのに他人のもののようだ。
強直したまま未だ馴染まず。
もともと親指は岩のように固いがその延長線上が膠で固めたように固い。
圧し折るように揉み込むがバリバリ音がする。
 小手に似たり。
他人の手で竹刀を執るに等しかった嘗ての往時を思い出す。
振るたびに竹刀が飛び離れそうになるあの感覚を忘れない。
 馴れるに任す以外手はなさそうだ。
 おまけに当日は手がかじかみ取り懸け自体ままならない有り様。
 何せ親指の背を中指腹にくぐらすことができない。
 止む無く、親指先を伸びた中指に接触させるだけの変則的取り懸けのまま引き分け大三に至らんとすとユカケの溝に弦がパチンと嵌め込まれたような疳高いシグナルを発するのである。
 わたしは、この信号音を確認して大三より会へ、そして離すのである。
場合によれば、離の寸前にして発信音を耳にすることもある。
 ユカケが“さら”なることで言い訳がましいことを白状してしまった。
またまた大きな課題を抱えることになった。
 今日も先生方より二三本的を射ってみてはどうかと勧められたが、この課題克服の日まではとてもじゃないが辞退せざるを得ないのです。