弓事始め《33》

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もはや1年も過ぎたので諸注意や叱責叱咤のお声は余り掛からなくなった。
 と云うよりむしろ、何を指摘しても指摘の甲斐の無い奴だと烙印を押されてしまったのかもしれない。
 ところがどうしたことか思い出したように突然、好くなったとお褒めの言葉を頂戴することもある。
 むしろ、自分では気色が悪い。
 自分ではどこが好くなったのか皆目分からないのだからなおさら気味が悪い。
 そんな折に、久しぶりに後ろからお声が掛かった。
『あなたには攻めの気勢が見えないよ。
弓手が攻め手だよ。
あなたはむしろ馬手で弓を引いている。
馬手で攻めているも同然だよ。
改めなさいよ。
もう一つ云うならば、右の肘で引く要領いを伝授いたしましょう。』といろいろ多方面にわたって優しくアドバイスくださった。
 
武道なるが故に何より攻めの気勢が最重要課題に違いない。
然れども、表面上うわべだけ威丈高に振る舞っても埒が明かない。
返って見苦しかろう。
如何にそれを内面に秘めて外面に漏れいずる事無く充実させるか。
会から離に至る過程で離のタイミングを如何に会得すべきか。
 また、離の瞬間まで弓手はどのように攻め手として作用させるべきかお尋ね申したき課題は山積しているのです。
 焦ることなく気長にマイぺースを貫き徹すしかないのです。