老いぼれの独り言

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信じ難い。
此の世にこのようなことが有り得るのか。
11月30日のこと、7時に目覚め床を離れ朝飯を摂り食器洗いに台所に下りる時に何気なく座敷の間を見ると電燈が付いている。
おかしいなあと思った。
付けたはずがない。
灯ったままならば昨晩就寝の折には当然気付くはず。
夜中に小用に立った時にも真っ暗闇であった。
とても不可思議でならない。
その時は、恐らく齢のせいでちょっとした錯覚とか思い違いがあったのであろうとおのれを精一杯納得させておいた。
処が、出立の諸準備を済ませ9時ころに再び座敷の間に目を遣れば何んとそこには薄ぼんやりと蛍光灯の明かりが灯っているではないか。
此れにはさすがに魂消た。
寒気がし戦慄が走った。
身の毛もよだつ恐怖心が全身を包んだ。
在り得ぬことではない!
しばし呆然と立ち竦めた。
 
間もなく、わたしの視界に「りりー」の遺影が入ってきた。
そして、全てを察した。
わたしは霊感とか霊界の存在を頭から否定し去り愚かなりしこととして決して信じようとはしなかった。
そのわたしの心中に異変が起きた。
「りりー」の仕業に違いない。
間もなく此の家は無人の館となる。
午後に大阪へ発つわたしの動きを察して
此のイヌは自分の存在を無言で訴えたに違いない。
 焼香し合掌するわたしの姿を見てわたしが一番驚いた。
かつて、そうであったようにわたしは“留守番頼むよ”と今は亡き愛犬に声を掛けて家を出たのでした。