老いぼれの独り言

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的前に立ったことも無く巻藁の前でいつも右往左往している者が恐れ多くも「弓の道」を珍道中しながら、それでも一人旅を堪能致しておる。
的は両方の目で捉えねばならない、況してや右目を主体に物見致さねばならぬのにわたしの右の視力は0.1以下でしかない。
辛うじて左が1.0程度あるに過ぎない。
そもそも弓を遣る資格がない不適格者なのかもしれない。
何とわたしの狙うべき的が横一線にみな連なって見えてしまうのです。
此の致命的欠陥を克服するためにわたしはふと左目だけで試みてみることに気付いた。
ある日これを試してみた。
巻藁に小指の頭ほどのチョークの破片を埋めこんで右目を閉じ左目だけで
「満月の狙い」で射て見た。
 すると驚くなかれ此の白墨の小片が鮮やかに弾き飛ばされではないか。
 行き成り突然にも射法を開眼したかのような錯覚に陥った。
 恐る恐るもう一度試みますれば再び真白き異物が床の上に転がったではないか。
 確信を以って再度やってみたが今度は駄目だった。
 その次もそのまた次もダメだった。
 白いチョウクに拘り執着すればするほど近くに達するが中らなかった。
 終わり掛けに漸く三度目の的中を得た。
 斯くなる変則的邪道に等しい射で以って二十八メートル先の的まで矢が飛ぶはずがない。
 それを思うと虚しさだけがわたしの心身に纏わり付いて離れなかった。
 これこそが「骨折り損のくたびれ儲け」と云うヤツか。
 今日もまた徒労に終わった。