老いぼれの北海道行き《4》

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北海道紀行           二〇〇五年秋
 
④ 阿寒町にシカ牧場が出来たらしい。
繁殖し過ぎ農作物への被害が夥しいので捕獲した分を囲い込み給餌し食肉用に供するのだと言う。
フランス料理でシカ肉は高級品らしい。それ程にまで蝦夷シカは観光客には顔なじみだ。
奈良公園同様に観光ずれしてしまった野生動物には興ざめだ。
大自然の中に人間の営みが融合する絶妙の芸を強調するあまり本末転倒になってしまっては元も子もない。
蝦夷リスやシマリスとて余りにも人間ずれし過ぎだと言わざるを得ない。
野生の営みと人間の営みとは歴然と隔離すべきだと思う。
キタキツネを一瞥したが、さすが獣の女王に値しよう。
流し目でこちらを不審気に睨み返した。ヒグマにいたってはその気配すら現さなかった孤高の猛獣らしくやはり帝王に違いない。
かつては「おやじ」と称されて恐れられていた所以であろう。
カナダのバンフー近郊の観光地にまるで武器庫と見間違えそうな鋼鉄製の頑丈なゴミ箱があった。
野生の動物が人間の残飯と接触する機会を極度に警戒し、完全に遮断しようとの試みらしい。
野生の動物と触れ合い、愛しむことも大事かもしれないが、この大自然の宝庫の中では両者の共存共栄は必要ない。
人間は高慢になってはいけない。敬虔なる大自然の営みに人間はもっと謙虚でなくてはいけない。
人間はいやと言うほど北海道の自然を征服し続けてきたのだから、もうこれくらいで止した方がよい。
ハイウエイなんてとんでもない。もうこれ以上要らない。
ドサンコに引かれた馬車道で十分である。傲慢なる人間たちよ、もうそろそろ気付かねばならないと思う。